おものめ様伝説~大蛇の化身に恋した娘~
昔、加美町四日市場元宿に1人の美しい娘が住んでいました。 いつの頃からか、この娘のところに1人の若い男が通うようになりました。その若者はこの世のものとは思われないほど美しい面立ちでした。そして2人の仲は、日増しに深くなるばかりでした。
娘の家には年老いた1匹のガマが住みついていました。そのガマは娘のところに通ってくる若者は、実は大蛇の化身であることを知っていました。 そこで、ある時娘にそのことを知らせ、 若者とつきあうのをやめるよう忠告しました。けれども、恋におぼれて夢中になっていた娘は、忠告を聞かなかったばかりか、ついには若者の子を身ごもってしまいました。
ガマは娘のことを気の毒に思い、「私の言うことを信じないのなら、今度若者が来たら着物のすそに糸を長くつけた針を通しておきなさい」と娘に言い聞かせました。娘は半信半疑でしたが、忠告に従うことにしました。
そのことがあってから、若者は娘のところへ通って来なくなりました。驚いた娘は、何日も夢中になって若者を探しました。そして、とある山道にさしかかった時、目の前に若者の着物につけた糸を見つけました。その糸をたぐって行くと、ある老木の根元のほら穴の中に入っていきました。ほら穴の中を探ると、そこに大蛇の死骸が横たわっていました。それは、あの若者に化けた大蛇だったのです。
娘は嘆き悲しみました。そして家族や世間にわびて、せめて多くの若い人々のために良い縁が結ばれるよう縁結びの神として奉仕したいと言い残し、近くの沼に身を投げました。村人はこれを哀れんで供養し、縁結びの神としてまつりました。これが、鹿島神社にまつられる「おものめ様」だということです。